【女性の部屋】坂井地区剣道連盟 石橋 沙希  | 福井県剣道連盟

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特集
【女性の部屋】坂井地区剣道連盟 石橋 沙希 
  • 剣道

今だからこそ味わえる剣道

私が剣道を始めたのは小学5年生のころでした。初めはただ「やってみたい」という軽い気持ちでしたが、竹刀を握って道場の空気を吸い込んだとき、言葉にできない凛とした緊張感に魅せられ、気づけば中学・高校と剣道部での日々が当たり前になっていきました。あの頃は稽古がきつくても体は素直に動き、試合で勝てば嬉しく、負ければ悔しくて泣く——そんなまっすぐな時間を過ごしていました。
高校を卒業しても剣道との縁は途切れず、社会人になってからも時々試合に出たり、ふらりと道場に顔を出したりしていました。しかし妊娠・出産を機に生活の中心は大きく変わり、自然と剣道から距離を置くようになりました。「何年か休んでもまた戻れるだろう」と思っていたものの子育ての日々は慌ただしく、竹刀を握ることはすっかり遠いことのように感じられました。
それでも、心のどこかでずっと剣道を恋しく思っていたのだと思います。3年ほど前、ようやく生活に少し余裕が生まれ、「もう一度剣道をしたい」という気持ちが強くなりました。久しぶりに道場に戻ったとき、懐かしい足音や竹刀の打ち合う音が胸に響き、「帰ってきた」と心から思えた瞬間を今でも鮮明に覚えています。しかし、再開した剣道は昔と全く同じではありませんでした。頭ではわかっていても体がついてこない、踏み込みが遅れる、思ったように打てない。若い頃のようには動けず、悔しさやもどかしさを何度も味わいました。昔の自分と比べて落ち込むこともありました。でも、だからこそ気づけたことがありました。それは「上手くいかなくても、剣道は楽しい」ということです。
若い頃は勝ち負けや結果が気になり、「強くなりたい」という思いがいつも自分を急かしていました。ところが今は、技が決まったときの小さな喜びや、身体が軽く動けた日の爽快感、仲間との稽古で汗を流す時間——そのひとつひとつがとても愛おしく感じられます。以前のような体力やスピードはなくとも、心の中での剣道の位置はむしろ大きくなり、深くなっているように思います。
剣道は、技術だけでなく礼節や心構えを学ぶ武道です。相手を尊重し、自分を律し、一本に込める覚悟を大切にする——その精神は、日常生活にも静かに影響を与えてくれています。若い頃には気づけなかった剣道の魅力を今ようやくゆっくり味わえているように思います。
これからも、無理のない範囲で一歩一歩前に進みながら、剣道を続けていきたいと思っています。再開した今の私は、昔よりずっと剣道が好きです。剣道を通して得たつながりと学びを大切にしながら、これからも成長していきたいと感じています。

△令和7年10月の「お通杯大会」に出場した石橋沙希さん(右から2番目)

 

 

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