「第69回全日本剣道選手権大会」が2021年11月3日(水・祝)、三大会ぶりに東京・日本武道館で開催され、福井県代表の林田匡平選手(五段、丸岡高校教員)が福井県勢過去最高成績となる準優勝を果たしました。
今年3月の前回大会も含め、過去2度3位に入っている林田選手は1~3回戦、メンを中心に決め、1本も取られず8強入り。準々決勝は一時追い付かれたがメンの2本勝ち、準決勝はメンの1本勝ち。4度目の全日本出場で県勢初の決勝に進出しました。
決勝は筑波大学後輩の星子啓太選手(四段、鹿児島県代表)との対戦。序盤、互いにメンを打ち合ったが星子選手にメン先取を許し、中盤にもコテを攻められてからのメンを決められ敗れました。3位は林田選手と対戦した村山仁選手(六段、神奈川県代表)と山田将也選手(四段、愛知県代表)。
▽1回戦 林田 メ、コ - 白鳥湧也(千葉県)
▽2回戦 林田 メ1本勝ち - 尾池智行(岡山県)
▽3回戦 林田 メ1本勝ち - 黒川雄大(長崎県)
▽4回戦 林田 メ、メ - メ 村上哲彦(愛媛県)
▽準決勝 林田 メ1本勝ち - 山田将也(愛知県)
▽決勝 林田 ― メ、メ 星子啓太(鹿児島県)
【全日本選手権大会に出場して】
丸岡高校教諭 林田匡平
この度「第69回全日本剣道選手権大会」に出場させていただき、準優勝という結果を残すことができました。これも日頃より指導していただいた先生方、支えてくださった方々のお力添えがあってこそのことだと感謝しております。
過去2度3位に入賞させていただいており、今回こそは必ず優勝するという決意を持ち、自分を奮い立たせ稽古を積んでまいりましたが、力及ばず決勝で鹿児島県の星子選手に敗れてしまいました。敗れた決勝では1本目奪われた相メンが全てであったと感じております。勝負は一瞬でしたがその一瞬に今までの稽古の全てが詰まっており、剣道の奥深さ、難しさを痛感いたしました。
福井国体が終了し3年目を迎えましたが、この大会で結果を残すことで再び福井県の剣道発展の機運を高めることができればと思い試合に臨みました。少しでも皆様のお力となり剣道修行の一助となることができていましたらこの上ない喜びです。
私自身、今回の結果の悔しさを忘れることなくこの大会で優勝するという強い決意で、今後より一層精進して参りたいと思います。また、指導者としまして後進の育成に全力を尽くし、福井県の剣道を盛り上げていきたいと思います。今後も変わらぬご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。
【観戦記】
強化・選考部長 柳原潤一郎
今年度の全日本剣道選手権大会が3年ぶりに日本武道館で開催された。前回大会は不参加であった警察官の出場が可能となり、勝見選手(神奈川)、竹ノ内選手(東京)、國友選手(福岡)ら3人の優勝経験者をはじめ、世界選手権で活躍した実績のある選手が多数参加しており、これらの選手と本県代表の林田選手の優勝争いを期待して観戦した。
しかし、第1試合場第1試合で國友選手が敗れる波乱の幕開けとなり、竹ノ内選手、安藤選手(北海道 世界選手権個人優勝)が初戦で敗退、勝見選手も2回戦で姿を消した。このような中、林田選手は初戦で千葉県代表の白鳥選手と対戦。白鳥選手とは3位入賞した前回大会の準々決勝で対戦しており、この時は開始早々にメン2本を連取して勝ち上がっている。今回は白鳥選手がその経験を基に対策を取ってくることが予想され、これに対する林田選手の試合運びに注目した。立ち上がり、剣先で厳しく攻め、鋭く間を詰めるや否や、思い切ったメンに跳びこむと、これが見事に決まる。白鳥選手はおそらく林田選手のメンを念頭に対策していたはずであり、それを前提とすると林田選手としては序盤を慎重に戦い、白鳥選手の出方(林田対策)を見極めて勝負に行くのではないかと予想していたのであるが、開始直後の圧巻のメン勝負、対策をものともしない見事な一本であった。この対戦に限らず、この日の林田選手は、以前より足幅が小さく、左足のひかがみが伸びて構えが大きく見えた。準々決勝の村上選手(愛媛)との対戦でも、体格の差を感じさせず、中心から攻めて真っ向から面を決めており、帰宅後に観た録画放送でも解説者が「審判の先生もとりやすい」と解説しておられたのも納得できる。その後も危なげなく勝ち上がった林田選手は、決勝で星子選手(鹿児島)と対戦し、ここでも渾身のメンに出るがわずかに及ばなかった。
本県の全日本選手権での成績は、長らく昭和40年大会における勝木豊成選手のベスト8が最高であったが、林田選手が2度の3位入賞を経て、今大会で初の決勝進出を果たし、準優勝に輝いた。今後、林田選手を含めた本県選手が、一層切磋琢磨し、頂点を極める日が来ることを願いたい。