冨田選手は1回戦、大西選手は2回戦で惜敗
全日本剣道連盟主催の「第73回全日本剣道選手権大会」・「第64回全日本女子剣道選手権大会」が2025年11月3日（月・祝）、東京都の日本武道館で全国各都道府県代表の男女それぞれ64人ずつが出場し、トーナメント戦で行われました。本県からは10年振り2回目出場の冨田成慈選手（刑務官、六段）と8年連続11回目出場の大西ななみ選手（敦賀高校教員、六段）が出場しました。冨田選手は1回戦で埼玉県代表の棈松慎治選手（六段）にコテとメンを取り合った後、延長でメンを取られ敗れました。大西選手は1回戦で愛知県代表の安藤萌花選手（四段）にメンを取り1本勝ち、2回戦で千葉県代表の境桃選手（五段）に延長でコテを取られ敗れました。本年3月まで丸岡高校教員をされていた林田匡平選手が長崎県代表で出場、3位に入賞しました。
【冨田選手の結果】
▽1回戦
冨田成慈 コーメ、延メ 棈松慎治（埼玉県）
▽大会結果
優勝 星子啓太（東京都）
2位 國友鍊太朗 （福岡県）
3位 村上哲彦（愛媛県）
3位 林田匡平（長崎県）
【大西選手の結果】
▽1回戦
大西ななみ メー 安藤萌花（愛知県）
▽2回戦
大西 ー延コ 境桃花（千葉県）
▽大会結果
優勝 高橋萌子（神奈川県）
2位 大嶋友莉亜（大阪府）
3位 柿元冴月（福岡県）
3位 妹尾舞香（福岡県）
■全日本選手権大会観戦記
県剣連 強化選考部委員 鈴木 秀典
11月3日（月・祝）、日本武道館において開催された全日本剣道選手権大会に、堀江強化委員長とともに観戦させていただきました。本県からは男子冨田成慈選手（福井刑務所刑務官）、女子大西ななみ選手（敦賀高校教員）が出場しました。冨田選手は平成27年度第63回大会以来、10年ぶりとなる2回目の出場であり、大西選手はプログラムの中でもひと際目を引く11回目の出場ということで、改めて福井県のレジェンドであることを再認識しました。（今度お会いしたら胴にサインをいただこう！）
言わずもがな両選手とも敦賀高校の関係者（教員、OB）であり、岩谷先生をはじめ敦賀高校関係者やご家族、職場の方々など大応援団が駆けつけ、熱い声援を送っていました。（それを見た堀江先生がボソッと一言「俺が出たときは応援少なかったなぁ・・」としみじみおっしゃっていたのが印象的、鈴木の時もそうでしたが（涙））。前回大会から男女同時開催ということで観客も多く、二階席はほぼ満席。4試合場で熱戦が繰り広げられているため、どの試合を見ていいか分からず、堀江先生に「とりあえず手分けして2試合場ずつ観ますか！」と打診したところ「いやいや剣道家として”遠山の目付”が重要」とのご指導を受け、4試合場を同時に観るスキルを身につけました。
さて、冨田選手の1回戦が始まる。相手は埼玉県代表の棈松選手（埼玉県警）、警察大会でも活躍し、本格派上段の有名選手である。しかし、私のイメージでは冨田選手は上段に対してめっぽう強い印象。期待が膨らみいざ試合が始まる。「始め」と同時に勢いよく間合いを詰め、右コテを放ち、捉えた！と思ったが、相手も流石！それを抜いてメン、旗3本となり先制された。それでも冨田選手はその後臆することなく、いつも通り下半身を充実させ、剣先を上手く使いながら相手を攻め立てる。それが効いているのか、流石の棈松選手もたじろぎ、居つく場面が多くなっていく。徐々に惜しい右コテ、左ゴテを捉えていき、最後は相手の足が完全に止まったところへ、強烈なコテが炸裂し、タイに持ち込んだ。35歳を迎え体力的には落ち目にあると思うが、あの状況で猛攻を仕掛られるということは、この大会にかける強い想いと相当な稽古量を積んできたことが容易に想像できる。冨田選手もまたレジェンド！さて、勝負となり、程なく5分が経過し、延長戦に入る。これまでの試合の流れから完全に冨田選手に分がある印象。以降どうやって相手を攻めたてるか期待をしていた矢先「延長始め！」と同時に両者メンに跳ぶ！相メンの形となり、やや相手の方が速かったか？相手側に旗3本が上がり、勝負あり。もう少し慎重にいけばなぁ！と感じる部分もあったがその豪快さはやはり冨田選手らしい。紙一重の勝負であった。
続いて、大西選手。相手は愛知県警察で活躍する安藤選手、本年度の中部管区警察大会で個人準優勝し、勢いのある選手だ。その安藤選手に対し、大西選手は序盤から足を使ってよく攻め、相手の手元を浮かす。まさに攻撃は最大の防御と言わんばかりに上へ下へと惜しい技を繰り出す。ただ決して強引ではなく、相手の動きをよく観察し、虎視眈々と狙っている様子。そうこうしているうちに開始から2分、鍔迫り合いから別れようとする絶妙なタイミングで引きメンを決める。今日は前によく攻めているせいか得意の引き技をあまり出していない印象だったが、ここで出してきたか！という印象。試合の組み立て方を見習いたいものである！その後も勢い止まらず、体当たりで相手を場外に押し出すなど完全に主導権を握り、1本勝ちを収めた。
2回戦は千葉県警の境選手。お互い運動量は豊富でギリギリの戦いの中、一進一退の攻防が続く。ただ相手選手は大西選手のことをよく研究している感があり、引き技は警戒しているようでほぼ打たせない。決め手がなく5分間が終わり、延長戦も2回、3回と重ね、ヒリヒリするような展開が続く。大西選手も飛び込みメンや惜しい引きドウもあったが決め切れない。死闘が続き延長6回目、大西選手の足が止まったところに相手の払いゴテが決まり、激戦の終止符が打たれた。試合後悔しそうな表情を浮かべていたが両者の検討を称えたいと思う。
今回、私自身9年ぶりに現地で観戦させていただきました。同じ会場とは言え、全国警察大会の殺伐とした雰囲気とは違い独特の緊張感があり、改めて剣道界の最高峰の大会であることを肌で感じることができました。本県の強化に携わる者として、未来ある若い選手がこの檜舞台で活躍することを切に願い、澄みきった東京の空の下、日本武道館を後にしました。
